日本人教師の長所は?
それでは、いよいよ日本人教師の長所を見ていきたいと思います。
主な長所を5つにまとめてみました。これらの長所は、学習者が英語学習の初期の段階で特に効果的に発揮されます。
日本人教師は・・・
1.日本語を使用して教えることができる。
2.英文法に精通しており、ネイティブ教師よりうまく教えられる。
3.生徒の目標になることができる。
4.英語習得の道筋を熟知しており、学習のサポートを提供することができる。
5.生徒をよりよく理解することができる。
それぞれ順番に説明していきます。
1.日本語を使用して教えることができる。
授業で日本語を使っても、英語がしゃべれるようになる?
英語の授業で日本語を使うと聞いて、「そんなことをしたら、英語はしゃべれるようにならないのでは」と思う方もいるでしょう。
しかし、そんなことはありません。
英語学習の初期段階での日本語使用には、さまざまな利点があります。その利点をうまく生かすことで、効率的に教えることができ、学習にかかる時間を大幅に短縮することができます。
英語だけの授業は分かりにくい
英語だけの授業は初級者にとって理解しづらいものです。
ある初級の生徒がいて、その生徒は、身の回りの限られた数の単語と、自分の名前を言うことくらいしかできなかったとします。
この生徒が日本語を話せないネイティブ教師から、英語だけで教えられたらどうなるでしょうか。
教える内容や教える技術にもよりますが、そのような授業は理解しづらいだろうということは容易に想像できると思います。
英語をはじめたばかりの小学生、中学生、あるいは長く英語から離れていた大人の生徒を、いきなり英語だけで教えるのは、実際ハードルの高いことです。
日本語を使う授業は分かりやすい
日本人教師ならばこの問題を解決できます。日本語を使って教える日本人教師の授業は、単純にずっと分かりやすいです。
確かに、初級からネイティブ教師に英語だけで教わっても上達しないことはないし、緊張感のあるネイティブとのレッスンから学ぶことは、貴重かもしれません。
たとえば、「Nice to meet you.」の意味を、身振り手振りを交えた英語による長い説明の末に、ようやく理解できたとします。
日本語を介さずに英語を理解するのは大切なコミュニケーションスキルですし、そのようにして理解したことは一生忘れることのないくらい印象深く覚えられるでしょう。
ネイティブ教師とのそのような学習経験も必要です。
しかし、すべてこれでは効率が良くありません。覚えること、学ぶことはほかにもたくさんあります。
日本人教師なら、「Nice to meet you.」は「はじめまして、どうぞよろしく。」という意味だと日本語で説明することができます。
さらに、どういう理屈でそのような意味になるのかとか、どのような場面でどのように使われるのかなど、理解の上で必要な付加情報も日本語で与えることができます。
そうすれば生徒は即座に、しかも明確に理解でき、ほかの学ぶべき多くのことに時間を回すことができます。
学習時間を大幅に短縮する
日本人教師は、日本語を使用することによって効率よく教え、学習にかかる時間を大幅に短縮することができます。
ひとつの言語がある程度しゃべれるようになるのに、約2,000時間の学習時間が必要と言われています。
しかし、教室で英語を学ぶ時間はごく限られています。
学校では週4~5時間(年間200時間程度)、英会話スクールでは週1回の通学ならたった週1時間(年間約50時間)です。2,000時間に到達するのに、それぞれ10年、40年かかります。
この限られた短い時間に効率的に英語を学ぶには、日本語の使用が欠かせません。
また、いずれはネイティブ教師から教わるにしても、日本人教師が事前に日本語を使って英語理解の下地作りをしておいた方が、学習ははるかにスムーズに進みます。
日本語の使用量
授業中の日本語の使用量は、生徒のレベルに合わせて多くしたりも少なくしたりもできます。
レベルが上がるにしたがって使用量を減らしていくのが基本です。
授業から日本語を完全に排除する必要はありませんし、日本語の使用に対して罪悪感を持つこともありません。
日本語は授業をより分かりやすくするためのツールだとポジティブに考え、状況に応じて柔軟に使用すれば良いと思います。
日本語の使用場面
また、使用する場面もさまざまなものが考えられます。
・単語の説明
例えば、単語の意味を説明するときに日本語はとても有効です。
ある単語の意味をネイティブが長い時間かけて英語で説明してくれたとしても、多くの場合、生徒はなんとなくしか理解できません。
そして、結局は辞書を引くことになります。とくに抽象的な単語の意味は、英語での説明がとても難しいものです。
日本人教師の場合、日本語で意味を教えれば即座に、そして完全に理解させることが可能です。
また、日本語でその単語の使用方法や使用場面について解説したり、微妙なニュアンスを説明したり、日本語英語との意味の違いに注意を促したりなど、さまざまな付加情報を伝えることもできます。
・文法、イディオム、構文の説明
文法の説明、あるいはイディオムや構文の意味と用法の説明なども、日本語でおこなったほうがはるかに効率よく確実です。初級者に英語で文法を説明してもまず理解できません。
・文章読解
また文章読解も、日本語の訳と日本語の解説を介さなければ完全に理解することは不可能です。アカデミックな論文を読むレベルのかなり上級の学習者に対しても、日本語を使って日本人教師が教えた方がずっと有効です。
・質問に答える
生徒からの質問にも日本語で答えた方が良いでしょう。
というより、実際に教室で生徒から質問されたら、英語で質問に答えるという選択肢はないと思います。
質問されるような箇所はもともと分かりづらいところなので、日本語で説明しなければ理解できませんし、ここで日本語を使わないという手はありません。
質問に日本語で分かりやすく答えられるというだけでも、日本人教師の大きな強みだと思います。
日本語は活用されるべき、すでに私たちが持っている知識、能力
このように、日本語は教室から取り除かれるべきものではなく、すでに私たちが持っている知識、能力としてうまく活用されるべきものだと考えることができます。
実際のクラスでは、日本語のアシストが必要な場面がいたるところにあります。
日本語の使用は、初級者が英語を学習する上で欠かすことのできないものです。
「英語脳」は徐々に作られるもの
よく「英語を英語のまま理解しなさい」という言われ方がされます。
英語を日本語に直してから理解するのではなく、ネイティブと同じ脳の回路で英語をそのまま、ダイレクトに理解しなさいという意味です。
確かにそれは大切なことです。英語力が上級に進むにつれ、必ずそのような回路ができていかなければなりません。
しかし、それは英語力の向上とともに徐々にできていくもので、日本語を母語として獲得し終えたあとの私たちには、始めからすべてそのようにするには無理があります。
そうではなく、英語を理解するときにはまず日本語を介すことから始め(英語→日本語→理解)、その回路を少しずつ英語で直接理解(英語→理解)できるように変えていくのが正しい道筋です。
英語を理解するために、日本語の介在は必要なのです。
日本語の使用は生徒の緊張も取り去る
さらに、日本語の使用は学習者の精神的緊張を取り除くことにも役立ちます。
英語で話していて、相手が何を言っているのか理解できない時ほど苦痛なことはありません。
学校でのネイティブの授業が理解できず、緊張しながらあてられないことをひたすら願っていたという経験をした方もいるかと思います。
また、理解していないのに相槌を打ったり、笑顔でごまかしたりと、いろいろと精神的に疲れることを強いられることになります。
外国人講師の英会話スクールに通う学習者にも、このようなコミュニケーションの不具合が苦痛になり、結局スクール通いをやめてしまうというケースがとても多く見られます。
日本語を使う日本人教師は、生徒にこうした不安や緊張を与えることがありません。
日本人教師による英語教育を!(目次)
①日本人教師に教わることは必要か
②英語の初心者、初級者にネイティブ教師は早すぎる
③英語の初心者、初級者にはネイティブ教師より日本人教師
④「ニュータイプ日本人英語教師」とは・・・
⑤ネイティブ教師とも対等に渡り合える「ニュータイプ日本人英語教師」
⑥ネイティブ教師の長所は?ネイティブ教師の短所は?
⑦日本人教師の短所は?
⑧日本人教師の長所 – 日本語を使用して教えることができる
⑨日本人教師の長所 – 英文法に精通しており、ネイティブ教師よりうまく教えられる
⑩日本人教師の長所 – 生徒の目標になることができる
⑪日本人教師の長所 – 英語習得の道筋を熟知しており、学習のサポートを提供することができる
⑫日本人教師の長所 – 生徒をよりよく理解することができる
⑬日本人教師のすべきこと・・・