英語4技能教育研究家・オンライン英語レッスン | 鶴岡俊樹のブログ

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⑤The Native Speaker Fallacy

鶴岡オンライン英語塾

Phillipsonは、「理想的な英語教師は英語のネイティブ教師である」というこの広く信じられた考えを、「The Native Speaker Fallacy (fallacy:一般的に抱きがちな誤った考え)」と名付けました。

この考えは、上述の通りネイティブ英語教師には多くの利益をもたらす一方、ノンネイティブ英語教師には不利な状況を作り出しています。

Phillipsonは、「The Native Speaker Fallacy」はアメリカやイギリスのような“中心”諸国(英語を教える側の英語圏の国々)によって、政治的、経済的、イデオロギー的に巧妙に意図されたものであると主張しています。これらの諸国は“周辺”諸国(英語を教わる側の非英語圏の国々)での自分たちの優位性を確立し、それによって利益を得ようとしていると彼は述べています。

*筆者補足:筆者もブリティッシュカウンシルのトップが「英語は北海の油田より重要な資源であり、イギリスは英語によって政治的、経済的、イデオロギー的に世界に進出する」という趣旨の発言をしたという記事を、別の文献で読んだことがあります。

 

Canagarajahはこの「The Native Speaker Fallacy」がもたらす結果を詳細に説明しています。

彼は「The Native Speaker Fallacy」は「English only movement」を支える根拠となっているとしています。「English only movement」とは、「授業の中では英語しか使ってはいけない」というものです。「English only movement」の考え方では、生徒の母語は有害であり授業から取り除かれるべきものとみなされており、第二言語習得に役立つ道具とは考えられていません。

このムーブメントのおかげで、“中心”諸国出身のネイティブ英語教師の価値と利益が守られているのです。

 

Canagarajahは、「The Native Speaker Fallacy」がもたらすもうひとつの結果についても述べています。

彼は、イギリス英語やアメリカ英語のような“標準”英語が、世界の各地で話されている“非標準”英語に対して優位性を保つためにも「The Native Speaker Fallacy」は役立っていると指摘しています。「The Native Speaker Fallacy」のおかげで、“非標準”英語がこれ以上広まって“純粋な英語”を壊すことを防ぎ、また“標準”英語を学習者に広めることもできるのです。

 このような状況では、ネイティブ英語教師が重宝され、一方でノンネイティブ英語教師は現場から除外されがちになるのは当然のことです。

 

またCanagarajahは、「The Native Speaker Fallacy」が前述のように雇用の機会に影響を及ぼしていることにも言及しています。

「The Native Speaker Fallacy」によって、ネイティブ英語教師は“中心”諸国と“周辺”諸国の両方で雇用が保証され、一方でノンネイティブ教師にとっては“周辺”諸国でさえ仕事を見つけることが難しくなっているのです。

 

さらにCanagarajahは、教師がネイティブかノンネイティブかということをあまりに問題にしすぎると、結果的に教師の語学教師としての専門性の価値が薄められてしまうとも主張しています。

もしもネイティブであるということだけで教師の価値が決まってしまうのならば、ネイティブ英語教師はよい語学教師であるための技術や能力を磨くことを怠り、生徒の母語やニーズ、文化を理解するといったことに努力を払わなくなるかもしれません。

同じようにノンネイティブ教師も、アクセントをなくしネイティブのような発音を身につけることにばかり躍起になる可能性があります。

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【論文】ネイティブ教師VSノンネイティブ教師(目次)

①ネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師、どちらが優れているの?

 

ESL Learners’ Perceptions of Non-Native English Speaking Teachers

②論文全体の要旨

③イントロダクション要旨

 

第1章・・・これまでの研究(抜粋)

④ノンネイティブ英語教師の直面する問題

⑤The Native Speaker Fallacy

⑥研究者、教師の考えるノンネイティブ英語教師の強み

⑦学習者の第一言語の使用 第一言語を使用すべきかどうか?

⑧第一言語を使用する利点

⑨Medgyesの研究と6つのノンネイティブ英語教師の強み

 

第6章・・・結論と示唆(抜粋)

⑩この研究の要旨

⑪教育学上の示唆