この研究は、ESL(English as a Second Language、第二言語としての英語)学習者がノンネイティブ英語教師についてどのように考えているのか明らかにしようとしたものです。
とりわけ、学習者が自分たちの英語学習にノンネイティブ英語教師がどのように役に立つと考え、またノンネイティブ英語教師にどのように教えられたいと望んでいるかに焦点をあてています。
研究はオーストラリアクイーンズランド州、ゴールドコーストにあるボンド大学付属語学学校(BUELI)で英語を学ぶ生徒、およびボンド大学のアカデミックライティングコース(英語ライティングの補助クラス)を受講している学生、総数39人を被験者として行われました。
その結果、被験者たちは「文法を教える」「学習者がどこでつまずくかがわかる」「生徒のことを理解する」「生徒の第一言語を使用して教える」の分野でノンネイティブ英語教師が優れていると認識していることが分かりました。
また、被験者たちは、彼らの英語学習の初期の段階では、よりノンネイティブ英語教師から教わりたいと望む傾向が強いことも明らかになりました(英語学習の初期段階では、教師が上記の分野で優れていれば、学習者により有効なサポートを提供することができる)。
これらの結果を考察してみると、被験者たちのノンネイティブ英語教師に対する見方は「プロブレムオリエンティッド」ではないかということが分かってきます。
つまり、被験者たちは積極的にノンネイティブ英語教師に教わることを望んだのではなく、自分たちの英語学習に問題があるために、その問題を解決してくれそうなノンネイティブ英語教師をとりあえず選んだのではないかと考えられるのです。
被験者たちがまだ低いレベルの英語学習者であるうちは、英語力が不十分なために教師たちとのコミュニケーションに問題を持ち、また学習経験の浅さから英語学習そのものにも問題を抱えています。
それゆえに、彼らはノンネイティブ英語教師が与えてくれる有益な手助けを必要とするのです。
言い換えれば、英語学習者がノンネイティブ英語教師を必要とするかどうかは、その学習者の英語のレベルによって決まるのです。
学習者は、彼らの英語学習の初期段階では英語を使うことが困難であるためノンネイティブ英語教師と学習したいと望みますが、彼らの英語のレベルが進むにつれて英語を扱うことがより楽になり、したがってノンネイティブ英語教師から教わる必要性が小さくなるのです。
被験者たちはノンネイティブ英語教師が有用であると認識しているにもかかわらず、ノンネイティブ英語教師よりネイティブ英語教師から学びたいという強い気持ちを持っているということも明らかになりました。
そして、この傾向は彼らの英語力がネイティブ英語教師と学ぶのに十分なレベルに達している場合に顕著でした。
彼らは、ノンネイティブ英語教師はスピーキングやリスニングなどのコミュニケーションスキルを教えることに向いていないとみなしており、したがってより進んだレベルの英語力を身につけるためにはネイティブ英語教師から教わるべきだと考えていました。
また、彼らのこうしたネイティブ英語教師を好む態度は、複雑な語学学習、語学教育ついて彼らが限られたことしか知らないことが原因であることも明らかになりました。
この研究の結果から、次のような示唆が得られます。
ティーチングの質を高めるために、ノンネイティブ英語教師は学習者が考えるようなノンネイティブ英語教師としての強みを適切に理解し、その強みを最大限に発揮できるように努めるべきです。
同時に学習者のノンネイティブ英語教師に対するネガティブな見方を払拭するために、学習者にgeneral language education(言語学習そのものについて教えること。
たとえば、言語とはなにか、それはどうやって習得されるのか、第一言語と第二言語の違いはなにか、ネイティブ話者と第二言語話者の違いはなにか、などについて教えること)を提供し、彼らを「Native Speaker Fallacy」(理想的な英語の教師はネイティブ教師であると盲目的に信じること)から自由にするべきです。
さらに、ノンネイティブ英語教師から学ぶことにどんな利点があるのかを、学習者によりよく知ってもらうよう努めるべきです。
【論文】ネイティブ教師VSノンネイティブ教師(目次)
①ネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師、どちらが優れているの?
ESL Learners’ Perceptions of Non-Native English Speaking Teachers
②論文全体の要旨
第1章・・・これまでの研究(抜粋)
第6章・・・結論と示唆(抜粋)