4技能英語教育研究家 | 鶴岡俊樹オフィシャルブログ

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Medgyesの研究と6つのノンネイティブ英語教師の強み

Medgyesはハンガリー語を母語に持つハンガリーのティーチャートレイナー(教師を養成する教師)で、ネイティブ英語教師VSノンネイティブ英語教師の論争に関連するいくつかの重要な研究をしています。

彼はこの論争について自著、「The Non-Native Teacher」やほかの多くの論文の中で詳細に検証しています。

彼は、さまざまな国出身のネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師を対象にアンケートを実施し、その結果をもとに6つのノンネイティブ英語教師の強みを見出しました。それは次のようなものです。

1.学習者が模倣するよい学習モデルになることができる。
2.language learning strategies(言語の効果的な学習方法、テクニック)をより効果的に教えることができる。
3.英語についてより多くの情報を学習者に提供することができる。
4.学習困難箇所を予測し、うまく回避することができる。
5.生徒のニーズや生徒が学習上かかえる問題をよりよく理解できる。
6.学習者の母語を利用することができる。

Medgyesは研究の結果をもとに、ノンネイティブ英語教師はネイティブ英語教師よりも英語力でははるかに劣っており、そのため教師として非常に不利な立場に立っているということを認めています。

しかし英語力では敵わないにもかかわらず、上述の6つの強みを持つため、とくに生徒と母語を共有している場合はネイティブ英語教師に匹敵することができると主張しています。

Medgyesの提唱するノンネイティブ英語教師の6つの強みは、以前のセクションで述べられた研究者、教師の考えるノンネイティブ英語教師の強みとおおよそ一致しているようです。

さらに詳しく考察してみます。

1.の「学習者が模倣するよい学習モデルになることができる」について、彼は次のように述べています。

ノンネイティブ英語教師は自分たち自身の努力によって英語を学んでいるため、より信頼のおける学習者モデルになることができる。
一方で、ネイティブ英語教師は完璧な言語モデルを示すことはできるが、学習者モデルになることはできない。
なぜならネイティブ英語教師は、彼らの生徒たちが授業で学ぶように第二言語として英語を学んだことは一度もないからである。

2.の「language learning strategies(言語の効果的な学習方法、テクニック)をより効果的に教えることができる」については次のように言っています。

ノンネイティブ英語教師は、自らが英語学習者として英語を意識的に学び、その学習プロセス全体を通してさまざまなlanguage learning strategiesを用いている。

そのため英語を単に母語として獲得しただけのノンネイティブ英語教師と比べ、多くのlanguage learning strategiesを知っており、それらを生徒に教えることができる(英語の学習方法、上達のコツを知っていて、それを教えることができる)。

3.の「英語についてより多くの情報を学習者に提供することができる」は、以前のセクションで考察した「ノンネイティブ英語教師の英語についての深い知識」に相当するものです。

自分の生徒をよく理解しているということは、よい教師であるための大切な条件の一つです。
そして、生徒をよりよく理解するためには、生徒のバックグラウンドを知っていることが不可欠です。

4.の「学習困難箇所を予測し、うまく回避することができる」と、5.の「生徒のニーズや生徒が学習上かかえる問題をよりよく理解できる」は、どちらも生徒を理解することに関連するものです。

つまりこれら二つは、生徒の母語の理解、生徒が語学学習上かかえる問題の理解、生徒が社会的、文化的、言語的に置かれた状況の理解などについて述べたものです。これらも以前のセクションで考察した研究者、教師の意見と一致しています。

4.の利点について、Medgyesは次のように述べています。

ノンネイティブ英語教師は生徒と言語的、文化的なバックグラウンドを共有しており、そのおかげで彼らは生徒が学習上遭遇する困難箇所により敏感になることができる。

5.の利点については、次のように言っています。ノンネイティブ英語教師自身もいまだ英語の学習者であり、まさに生徒と同じように常に英語学習の難しさを実感し続けている。

このように恒常的に英語という言葉と格闘しているため、ノンネイティブ英語教師は生徒に対してより理解を持つことができる。

Medgyesはこれら6つのノンネイティブ英語教師の強みを明らかにした上で、さらに自身が書いた論文のタイトルでもある「ネイティブ教師とノンネイティブ教師、どちらがより価値があるのか(Native or non-native: who’s worth more?)」という質問に答えようと試みます。

そして彼は、以下のような結論を出します。

ノンネイティブ英語教師は、ネイティブ英語教師と同程度に価値のある教師になることができる。
なぜなら、「6つのノンネイティブ英語教師の強み」が彼らの主要な弱点である英語力の不足を埋め合わせるからだと。

そして彼は次のようにも主張しています。

ネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師は、英語教育に対してそれぞれ違った形で、しかし同等に重要な貢献をすることができる。さらに、ネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師が教室の内外で協力し合うことが重要である。

学校の中には、お互いの強みを生かし、弱点を補い合えるようちょうどよいバランスのネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師が存在するべきである。

*筆者補足:Medgyesはさらに次のようなことも言っています。
よりよい語学教師になるために、ネイティブ英語教師、ノンネイティブ英語教師はそれぞれの弱点を克服するよう努力しなければならない。つまり、ネイティブ英語教師は生徒の母語を学び(あるいは外国語を学ぶ経験をし)、生徒の理解に努め、一方でノンネイティブ英語教師は英語力の向上に努めなければならない。

そうしてお互いがそれぞれの弱点の克服に努め続けると、最終的にお互いに限りなく近い存在になる。
つまり、双方とも高い英語力を持ち、生徒の母語を知り生徒をよく理解している。

しかし、限りなく近いにもかかわらず、双方の英語教師は決して同じになることはなく、お互いにユニークな存在であり続ける。そして、そのようなネイティブ英語教師とノンネイティブ英語教師が、二頭立て馬車のように協力し合って教えるのが最良の英語教育の形である。